ベッドに寝かされた赤ん坊は二人。 「双子かあ」 それをのぞき込んで相好を崩したロイの隣で、彼らの父親は苦笑を浮かべていた。 彼は本来ならばこんなところで油を売る暇などないはずなのだ。 アーセナルとの関係は悪化の一途をたどり、中立地帯であるはずのこの都市でさえ戦火の影が見える。 その責任の多くが己にあることを無視できるほど無責任ではない。 「おめでとう」 だが、と続けた顔は、いつもの飄々としたものではなかった。 国の舵を取る指導者のものだ。 「厄介なことになったな」 祝福して然るべき誕生。 しかし、彼らは他でもない、ビッグボスの、そう呼ばれた男の血を引くものだ。 「双子、ね。頭の固い奴らは未だに忌み嫌ってやがる。それでなくても、アンタの血を引く人間が、二人もいるってのは…」 双子は忌み子。 もっとも、それは同等の権利を持つ後継者が複数居ては困るという、世襲時代の習慣でしかない。 世襲制を廃止した今も、古くからの印象は根強い。 それでなくともアーセナル側には未だにカリスマ的な人気を誇ったビッグボスを求める声がある。 現在の王は、所詮代わりでしかない。こ こで安らかな寝息を立てるのは、そのビッグボスの正当な後継だ。 万が一、利用されることになれば、それはまたいらぬ火種を呼ぶ。 「ヘイブンの方に信頼できる人間がいる。しばらくそっちで…」 「全員、と言うわけにはいかないだろうな」 「うちでも引き受けよう。何、頭の固い爺どもは何とでもなる。アンタ達が家族水入らずで暮らせるように、とっとときな臭い空気を変えなきゃな」 数ヶ月後、アーセナルの奇襲によりアウターヘイブン、及びザンジバーランド東部は戦火に包まれることになる。 |