程よい酔いが身を包み、やがて世界が眠りに落ちる時間になった頃。 ほんのりと頬を染めた雷電が、突然席を立った。 「スネーク、一箱くれ」 「構わんがどうした、ここで吸えば良いだろう」 「年上の前では吸わない」 道教かお前はと突っ込む前に、雷電は、煙草のパッケージを掴んでいた。上着も羽織らず玄関へ歩いていく。 扉の開く音と共に、声が聞こえてきた。 「酔い冷ましだ、帰ったら続きを飲むから、片付けないでくれよ」 ばたん、と扉が閉められ後にはオタコンとスネークだけが残った。 見た目と違ってわりと酒に強いオタコンは、既にスミノフとブルックリンを2本づつ空けていてケロッとしている。 スネークは何となく火をつけずに煙草を口で弄んだ。 「女顔がいなくなったらやけにむさいな」 「8割方君のせいだけどね」 「言ってろ」 机に突っ伏したスネークを見て、オタコンが笑った。 いつもみたいにハハハ、と笑うのではなく、嫌らしく含みで。 なんだわりと酔ってるのか、と頭の隅で思う。 今ここを襲撃されたら簡単にケリが着くな、と何処か他人事のように感じた。 「雷電がさ、ちっちゃいころサンタを見たって」 「…ソリダスがそんなにお茶目だったとは知らなかった」 「違うよ、ホンモノだって」 オタコンは、先程雷電が話してくれた通りをスネークに伝えた。 酔っていたためいくらか省いたところもあったが、肝心なところは伝わっただろう。 伝わったと思いたい。 「あいつは…脆いくせにそれを認めたがらんな」 「それは君もだろう」 さらりと諭され、スネークは突っ伏したまま目を見開いた。 起き上がりオタコンを見つめると、意地の悪そうな笑顔を向けられる。 湿ってしまったフィルターを噛み火をつけた。 あまり美味くない。 「君だって、僕だって。そういうものさ人間ってのは」 そう言って細く切ったサラミを口に放り込む。 まるで何もかもわかってるみたいな顔をして咀嚼する姿は、何だかいつもより頼りがいがあった。 気恥ずかしくなって、無理矢理話題を変える。 「それにしても、赤い鯨か」 紫煙をくゆらせ、天井を見る。 背中に浴びる月光がどこか赤くなったような錯覚を覚えた。 「スネークのためなら、僕は鯨を殺すかもね」 「物騒だな…何の話だ」 「雷電が言ってた。人の命を吸い取る鯨なんだって」 もしも君が選ばれて鯨が君を連れて行こうとしたならば。 例えそれが聖者でも、初めてなにかを殺すだろう。 「君は、君が思ってるより独りじゃないってこと。雷電は泣くよ。彼は僕の前では強気に振る舞って陰でコソコソ泣くタイプだよ」 「…お見事」 その情景がありありと想像できて、スネークは渇いた笑いを浮かべた。 その頬に指が伸ばされる。 スネークはそれに逆らわず、やがて来る唇に目を閉じた。 「…ッ…スネーク、見て」 唇が触れ合うその前に、オタコンが窓を指差した。 深夜の空が、赤く染まっている。 まさかと顔を見合わせて、二人はベランダに飛び出した。 |