部屋に戻ったとき、スネークとオタコンは二人して半端無い量の酒を流し込んでいた。
殆ど自棄のように次から次へと瓶が放られる。


「…俺が居ない間に呑み比べでも始めたのか」
「おぉ美女がかえってきたぞー」
「らいでんおかえり〜」


ふにゃふにゃになって、これぜんぶのめたらたいしたもんですよとか呟いている変な生き物はオタコンだろう。多分。
こんなイケメンを捕まえて美女とか宣ったエロオヤジはスネークだ。耳まで真っ赤で目が据わっている。


さむくないだいじょぶ?みかんむいてあげようか〜うわっ酒臭い近付くなそういうなってわかいの〜なーオタコ〜ン首かしげるな大の大人が二人して気持ち悪い!


とまぁ大混乱である。


「あれ…」


酒瓶を振り中を覗き込む。
一滴も無くなってしまった酒瓶を放り、スネークは煙草に火をつけた。


「飲みすぎだ二人とも、いい加減にしておけ」


暖房の前に陣取り手足を暖めていると、スネークが雷電の側を指差した。
そこには結露してしまった赤ワインのボトルが置いてある。


「あるじゃないか、気がきくな。買ってきたのか」
「これはだめだ」


伸びてきた手を払ってボトルを守る。
二人分のブーイングを背中に受けながら、雷電はそれを冷蔵庫に放り込んだ。
別に飲んだって構わないが、これはいつか彼が来た時に取っておいてもいいだろう。
彼がここに来る理由を残しておきたいと思う自分に驚く反面、それもいいかと諦めている所もある。
まだ酒が頭に残っているのか。もうどうでもいい。
それよりも、と換気扇をつけた。白くくもった部屋をどうにかしたかった。


「…雷電」


沈み込んだオタコンに呼ばれ振り返ると、ソファの向こう側から腕だけが生えてきた。
近づくとトロンとした目がこちらを一瞥し、ごめんねと呟いた。


「なんのことだ?」
「サンタクロースのこと」


あの時、彼に抱きしめられていたとき、空が赤く輝いていたのは自分だけが見たものではなかったのだ。
彼らもそれにきちんと気が付いていたのだろう。
雷電はその言葉に微笑み、オタコンの額に張り付いた髪を払った。
ゆっくりと睡魔に襲われていく彼のために、隣の部屋から毛布を取ってくることにしたその背中に声がかけられる。


「雷電、お前は今でも死にたいと思ってるのか?」



かつてサンタクロースに願ったこと。
その願いは子供にしては現実感がなく、大人になってからではあまりにも逃避している。
そうやって苦しんだ時期もあった。そうやって泣き喚いて、絡めとられれば安らかになれると思い込んでいた。



「今…今は…どうだろうな」
「……」



そんな今ですら正直に言えばこの気持ちを忘れそうになる。
だけどその傍らで、確かに掴んだものもある。



「ああ、足掻くことと努力は覚えた」
「…そうか、それはいい傾向だ」


暖かな部屋で、雷電とスネークは一つの灰皿に二つの煙草を燻らせて、朝まで雪の降る窓を眺め続けた。
やがて、夜が明けてゆく。








ゆるやかに変化していく僕らの気持ち。






08/12/26  K輔