「ジャック」


それは、あの男の声だった。
信頼し、共に戦い、嫌悪し、それでも憎みきることの出来なかった声だった。
不思議なものだ。
微睡みに包まれたような穏やかさの中で、前に立つ人は哀れな老人ではなく、あの頃のままだ。


「私は…」


何か言いたそうに口をつぐんだ彼に、袂を分かったときの横暴さは感じられない。
ああ、結局。 俺もアンタも同じだった。俺たちは、みんな同じだった。
同じ夢を見て、夢ばかり見て、何も見えちゃいなかった。


「少佐」


だからもう、終わりにしようじゃないか。
同じ愚か者同士、いまさら争ってどうする。


「パラメディックとシギントが、待ちくたびれているだろう?」


また小言を聞かされるのはごめんだ。
水に流すわけではない。赦すわけではない。


「長かったな」


呆れるほどに。


「ああ、そうだな」


そこには貴女もいるのだろうか。



帰還報告。






08/06/23  あやふじ

何もかもが、これから始まる。