生と死を往き来する。人の枠をも越えて、ただ、獣のように愛していた。 薬は全身を蝕み、身体は暖かさを思い出している。 シャドーモセスの冷たい気温は、そのささやかな温もりまでも奪おうとした。 だからひたすらに目の前の男を睨んだ。 底冷えする瞳の奥に、あの頃の面影が残っている。 綺麗な顔に血が飛んだのを見たときは、正直夜の暗示だ、と思った。 赤でも良い、白でも良い。 どちらも似合いの色なのだから。 「お前が大切だ」 眉間に寄った皺がほどかれ、それが男を幼く見せた。 口を突いて出た本音に、目を丸くさせる様が可笑しい。愉快だ。 「俺は、お前が嫌いだった」 そう言った男の顔を見た。白いような、なんとも言えない淡い色の髪が顔を縁取っている。 壊れ物に似ている。 融け出しそうな、気体のような、掴めないものにも似ている。 「その理由が、わかった」 ナイフの刃が血でぬらぬらと光っている。 肯定するでも否定するでもなく、ましてや笑うことなどするわけもない。 無表情に言葉のさきを待った。 緩やかに弾み始める胸。 足に伝わる振動が、まるで自分の鼓動のような。 奮闘する老人を見下ろす奴の目は、ただただ濁って。 「殺したかったんだ、この手で、お前を」 そう言ったが反して表情は柔らかく、隈のできた目元には哀しみすら浮かべて。 だが、同時に笑うお前は、なんて愚かで優しいんだ。 生も死も棄てて簒奪されるならば、やはりお前がいい。お前でなければ駄目だ。 それこそが唯一の望み。 「告白か、今のは」 「どうだろうな」 喰らい合い、やがて果てるのがどちらでも。 俺たちはあの刹那、確かに愛し合っていた。 |