確かに謝罪や笑い話ではすまないことだった。 だけどただ一言、助けてくれと言ってくれさえすればまだ。 「その、ローズ…」 私も貴方も、疲れてしまっているのかも。 少し距離をおくことだって、時には必要だと思うの。 だって貴方は一人で悩み続ける事を選んでしまった。 私には入る余地など残されてはおらず、貴方も私に何て話したらいいかなんてわからないでしょう? 「……俺は、」 ただ苦しむ貴方を見るのはとてもつらいの。 わかって、ジャック。 「…すまない…」 どうして謝るの?謝らないで。 貴方を見捨てようとしているのは私なのに。 うつ向く貴方はとても疲れた顔をしていた。 元々ぜい肉のついていない、しなやかな身体は少し痩せたようにも見える。 頬の肉は痩けているし目もとは隈に覆われていて、昔の貴方の面影がない。 荒れた風にまとわり付かれて、誰も近寄れないような。 貴方を救うのはきっと私ではないわね。 私では決して知ることの出来ない気持ちがあるに違いないのだから。 「すまない…ローズ…」 お願い、お願いだから、自分をせめないで。 貴方のせいじゃないの。 貴方のせいなんかじゃ、ないのよ。 「それでも、それでもだ、ローズ…」 ジャックは昔のように私を優しく抱きしめると、ブーツを履き直して背を向けた。 私とジャックの間に見えない鎖があるように、私はそこを怨みにも似た思いで睨み付けた。 「それでも、君と出逢わなければ、と。思ってしまったんだ」 軋む扉は重い音をたてて、やがて閉まった。 私は彼の背中と綺麗な髪を忘れないようにと必死で、自分が泣いていることにも気が付かなかった。 |